好きでした、本当に。
嘘じゃないです、その気持ちは。 でも…


おかえりなさい…。
そうやって明るい声で迎えてくれると思った。

カカシは役1ヶ月の間長期任務だった。
その間、人を殺し死体は見飽きるほどだった。
そんな荒んだ心は、ひと時の安らぎを求め家に帰る。
家には、どんな荒んだ心も吹き飛ばすような笑顔が待っているはず、そう信じて。
しかし心空しく、家は空だった。

…?いないの?」
部屋を見回すが、人気はなく置手紙もない。
だが手紙はもちろんだった。帰る日を詳しく知らせていないのだから。

「…おかしいな、あのテンションで迎えられるのが嫌で、帰る日を教えなかったはずなのに…。」
教えたなかったことを後悔するなんて。
任務かな。それとも、誰かの家に泊まってる?夜遊びして、家に帰ってない?
もしかして、事故?入院なんて…。
まさか、と嫌な考えばかりが浮かぶ。可笑しい。
あれだけ、わずらわしかったガキに、こんなのは可笑しい。
コレが親心ってやつなのか?

…親の許可なしに色々出歩いて…帰ってきたら、うんと怒らないとな…」
帰ってきたら?は帰ってくるのだろうか。
オレが色々酷いこと言ったから、怒ったのかな。
なんて、別にいつものことだった悪態に罪悪感を感じる。
本当にいつものことだったから、突然怒り出すなんておかしな話だとは思うが、
怒りが溜まったなんてこともあるだろう。
嫌な考えばかり。暗い、重い思念の塊が静かにオレにのしかかる。






「…お、おかえりなさい。」
忍具をつけたままボーッとしていたら、いきなり扉が開いて人が入ってきた。
今帰ってきたのに「おかえりさない」とか、変なことを言ってる…逆だろ…っえ…?
…?」
「え…?はい、おかえりなさい、カカシ上忍…。」
「はい、ただいま。…こそ、おかえり。」
オレはいつもと違うんだろう。何かが。
の顔が少し強張っている。
オレはどううつってるかな。寂しそう?怒ってる?

「あの、カカシ上忍…?」
「…ん?…お前、どこ行ってたの?夜遊びかな?いけないなー。」
が忍具を外しながら、微妙な表情で近づいてくる。
「ごめんなさい、いつ帰ってくるか、知らなかったから…。あの、僕、…」
言葉に詰まる
何事かとの顔を覗き込めば、目に涙を溜めて下唇を噛み涙が溢れだすのを拒んでいた。
「…どーしたの?」
「ぼ、僕…のこと、カカシ上忍は嫌いでしょう…?僕、ここ、出ます…迷惑かけるし…」
どうやら、オレが可笑しい理由を勘違いしているようだった。
「別に、お前が嫌いとかで様子が違うんじゃないから…。気にすんな。ね?」
頭の上に手を置いてやれば、衝撃で目の淵の涙が床へ滴る。
夕方の赤い太陽の光を受け、その涙はまるで鮮血のような色で、オレはを傷つけていたことを実感させられる。
「…僕、カカシ上忍のこと、本当に好きです…大好きなんです…でも…」
崩れそうな苦い笑みをみせながら、は静かに続ける。

「想うことも祈ることも許されないなら、傍にいるだけ、辛くて悲しくて…我慢、できそうになくて…。」
だから、出ようって思って、今日も借りれる部屋を探してたんです。
今、自分の目の前で崩れそうに不安定なを眺めながら、
確かにオレの心臓が早鐘を打ちながらオレがするべきことを指示している。
「…。」
ボソッと一回名前を呼んで、細い手首を引っ張り、できるだけ、できるだけ優しく抱きしめる。
「…ごめんなさい、僕、気を遣わせて…っ」
「違うよ、違う。気なんか遣うほど、今余裕ないのよ。」
泣き止まない
しょうがなく、耳元で優しく囁く。
「ごめんね、。お願いだから、ずっと傍にいて、オレだけのために祈って。」
お前を傷つけない、約束するから、オレを愛してよ、オレだけを!



(君だけに許しを与える)