「おめでとうじゃん。良かったな、テマリ。」
「あぁ、ありがとう。」
姉のテマリが婚約することになりそうだ。
まだ予定だという段階のそれは、オレを足のつま先から蝕んでゆく。


「でも、上忍のなんて、結構モテるじゃん?大丈夫か?」
「何言ってやがる。あたしを誰だと思ってんだ。」
幸せなことが起こっている家庭では笑いが絶えない。
なのに笑うことができない俺は家族ですらないのかもしれない。

「おい我愛羅、お前も何か言ってやるじゃん。」
「・・・・・。」
「良いよ、別に。それより我愛羅。お前ものこと、好きだろ?その・・・これからも、今まで以上に仲良く・・・してやってくれよな・・・!」
「うわぁ、お熱いじゃん!」
「うるせぇ!」
脳天にショックを受ける。
テマリ、お前のいう俺が"好き"という感情は誤っている。
これからも仲良くなんてできるはずがない。
俺は、を、愛してるのだから。





俺が今まで理解することのできなかった"愛"という感情を知ったのは風影になり、
例のと上忍と風影としてふれ合い始めてからだ。
もともとテマリと仲が良いときいていたから話しやすかった。
それに、偏見というものもなくこんな俺を風影としても、一人の忍としても見てくれた。
そんなやつに惹かれない人間はいないだろう。強いて言ってしまえば、俺のなりたかった理想像でもあった。

「・・・で、俺にどうしろと?テマリと婚約破棄なんてできないからな。」
本気で好きなんだ。なんて本気で照れるので殴りたくなってくる。
「今の話を聞いてなかったのか?」
「聞いてたよ。つまり、我愛羅は俺のこと好きなんでしょ?ホモなの?苦労するよ。」
こいつがもっと風影に忠実であれば良いのに。
そうすれば俺のことは"様"付けで呼ばせるしテマリとの婚約なんて無理やり破棄させるのに。
しかしこいつは確かに忠実で誠実だが、風影として仕事をしていない普段の俺には敬意を払わない。
普段は友人のように接してくれるところも好きだったから、俺は苦肉の策にでた。

「俺と契約しろ。」
「な、なにを?え、婚約ですか!?」
「違う!バカかお前!そうできるならそうしたいところだが・・・とりあえず、俺の出す条件をのみ契約してもらう。」
「何その一方的な・・・。条件次第では、無理だって。」
「無理とは言わせない。契約を断ったり、条件を破れば・・・テマリは殺す。」
嫌な予感がしたのだろう。
目を見開いて、そうくるか・・・と苦笑いをする。
「そんなこと考える餓鬼は説教してやりたいけど、テマリを殺されちゃ困るしな・・・。条件は?」
テマリを殺されちゃ困る、か。
内心、が契約を断りテマリを殺せれば良いのにとも思っていた。
「条件は、
1.テマリといない時間は俺といること。もちろん夜もだ。
2.俺を一番にしろとは言わない。だが、俺も恋愛対象としてみろ。
3.任務終わりは俺とキス、
以上。」
「・・・・・ま待った待った待った、なんかちょっと可笑しくなかった?」
「何がだ。」
「いや、夜って何?!一緒に寝るの?恋愛対象?俺は男だよ!キスって!キスって!!」
喚くに一回、触れるだけのキスをくれてやる。
顔を離して、呆然とするを眺めながら、ニヒルに笑って言い放つ。

「テマリからお前をとろうなんてことはしない。
だが、初めて知ったこの感情、少しは楽しませてもらう。」



(前向きに生きてダメならば後ろから遠回りするのも悪くはない)