「おい、これはなんだぁ?」
「・・・それはお茶・・・。」
「ほぉう、なかなかだぁ。」

どうしてもこうしても、結局男は僕の家に上がりこんだ。
言ってしまえば、半ば無理矢理。僕は奴を家に入れざるを得なかった
それと言うのも十分前にさかのぼる。


「オレを家におく気はないかぁ?」
そう男が僕に言い、僕は即答でNOをくれてやるつもりだった。
ついでに、現在僕の手の中にある血まみれのタオルも返す予定だった。

「申し訳ないですけど、それは無理・・・「オレは知っている。」
一瞬、沈黙が流れる。
「・・・何をです?」
正直、今僕の体調が悪いことを知っていてくれたら良いのにと思う。
「貴様は自分の世界で管理が行き届かなくなるのが嫌なんだぁ。」
最初、何を言っているのかわからなかった。
そのうち、なんとなく意味を理解した。
「・・・そうですけど、何か?」
この時点で、認めてしまい話を広げた僕の負けだった。
「そろそろ飽きてきたんじゃねぇのかぁ・・?変わらない奴らと変わらない日々を送るのがなぁ・・・。」
「・・・・・。」
図星、というのもあったけど、そもそもなんでこの男は僕についてこんなに詳しいのかが気になった。
故の沈黙は、僕の動揺を煽る。
「オレを家におけば、その代償としてスリリングな非日常をプレゼントしてやるよぉ。」
「・・・・アンタは僕が世界を広げるものを求めないことを知ってるんだろ?だから、気持ちだけ受け取っとくよ・・・。」
いい加減、身体の調子も限界が近いので、早めに終わらせたかった。
「冗談いうなよぉ、オレは非現実。オレとどんなに関わろうと…貴様の世界が広がることは一切ないんだよぉ・・・。」
なぁ、美味しい話だろぉ?と僕に近づいてくる男の目つきは野蛮そのもの。
怪しい匂いに僕は後ずさりするが、そろそろ体力は底をつきたようで、僕はそのまま地面にシリモチをつく。
「・・・あ。」
「ほぉら、闇に飲み込まれる前にオレが助けてやるよぉ。」
そのまま、僕は意識を失いそうになりながらも男の肩を借りて部屋までつき、男はそのまま部屋に上がりこんだ。
というわけだ。


そして今、しょうがなく腹に詰め込むものを要求してくる男にコンビニで買ったお茶をやったところだった。
なんで病人の僕がこんないきなり家に上がりこんだ変な男にお茶を譲らなくちゃいけないんだ。

「・・・それ飲んだら帰って。連れてきてくれてありがと。さよなら。」
「おいおい、冷たいねぇ。オレらはこれから同居する仲なんだじぇ?」
「ざっけんな!!ぼっくは・・・あ・・・。」
調子が悪いのにいきなり大声を出してふらりと眩暈がする。
くそっと小さい声で毒づけば男は僕の近くにやってきて、僕をコンビニの袋頃ベッドへ押しやる。
「ちょ、何を・・・。」
「具合が悪いんだろぉ?それなら寝ときなぁ。オレは適当にくつろいでるじぇ。」
「ま、待て、お前なんかを監視しないで置いたら何が起こるか・・・」
僕がベッドから状態を起こすと、再び激しい眩暈が。
あぁ、本当にアンタは非現実?存在しない、世界の枠にも入らないもの?
オレは十分アンタのせいで迷惑こうむってるんだけど、これは幻覚か?
あぁ、幻覚だよ、幻覚。
だって、この男は現実のものではなくて、この男と関わってるときの僕の世界も、
現実のものではないんだろうから。



幻覚作用の導きを
(大丈夫、何があったって、それは現実じゃない)